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エベレストへの旅



エベレスト街道 トレッキング 8日目 カラパタール登頂!



4月2日(トレッキング8日目 カラパタール登頂)

5:30 あたりがまだ薄暗い中、カラパタール頂上へ向かって出発。

何もかもがカチカチに凍っている。かなり寒い。

イッコはおとといからほとんど眠れていないそうだ。本人いわく、眠っている間に呼吸が止まって死んでしまうかもと考えると怖くて眠れないとのこと。

眠れないからiphoneにダウンロードしている音楽やポッドキャストを聴いて夜を過ごしているらしい。

僕だってうとうとしたり、咳したり、うとうとしたり、トイレに行ったり、うとうとしたり、息が止まりそうになって「はぁはぁ」したりだ。まったくうまく眠れていない・・・。

しっかり睡眠をとって疲れをとる、なんてことが、この高度では全然出来ない。

エベレストの山頂近くになると、眠っても体力を奪われるというから、もっとひどい。

死の世界への入り口。

高山病を防ぐために水の補給は大切だ。

高地では酸素が少なく、必然的に「はぁはぁ」と呼吸量が多くなる。吐いた息には水分が含まれているので、吐けば吐くほど体から水分が奪われていく。

というわけで、高山ではこまめに水を飲む必要がある。

そのため、今回は「ハイドレーションシステム」という、長いストローつきの水筒を使用していた。

バックパックの中に入れた水筒から伸びたチューブの口をバックパックの肩ひもの横くらいに留めておく。そうすれば歩きながらでも好きな時にちょこちょこと水を飲むことができる。

今回イッコから進められて、このシステムを取り入れてみたのだが、これがなかなか便利でかなり役に立った。

が、今朝は出発して早々、吸っても吸っても水が出てこない。おっかしいなぁと確認して見るとチューブの中の水が凍っていた。

いったい今、気温は何度くらいなんだろう。温度計がないから分からなかったが、かなり低いことは間違いない。

山の後ろから朝日が射し始めた。日なたをしばらく歩けばチューブの中で凍った水も溶けるだろう。

ストローを外して、水を飲む。

食道を冷たい水がツーッと下りていく。

カラパタールを目指し、氷河に沿って進む。

岩や石に覆われた氷河の表面がところどころ裂けて、青白い氷の部分が見えている。

ゴロゴロとした歩きにくい岩の上や隙間をぬって、ただ黙々と歩く。

しかし、ちょっとした上り坂がなかなか越えられない。

すでに僕らが歩いている場所は5000mを越えている。思うように体も頭も動かないのだ。

8:30 峠を越えると目の前にとうとうカラパタールがどーんと見えた!

「黒い岩」という意味の通り、白い山々の中に「カラパタール」の黒い山頂部が際立って見える。

そのふもとにはゴラクシェプ(5140m)のロッジが数件見える。

ここまで3時間。予想以上に時間がかかっている。やはり5000mという地帯はなかなか厳しい。

とりあえず、あそこでちょっと温かいお茶でも飲もう。

イッコとロッジを目指す。

9:15 温かく甘いミルクティで人心地ついた僕らはいよいよカラパタールへの登頂を開始した。

乾いた砂浜のような場所を横切り、カラパタールの登り口へ移動。

見上げるとこげ茶色の山肌にくっきりとルートが刻まれている。さぁ、ここから標高差410mの直登だ!

と、気合は入るのだが、斜面に足を踏み込んだとたん、一気に体が重くなり、遅々として進まない。

歩きはじめると足の筋肉に一気に乳酸(みたいなもの。よくわからないけど・・・)が広がり、本当に苦しい。こんな感覚は初めてだ。(高山が初体験だからなにもかも初体験なのだが・・・)

5歩くらい歩いては休憩を繰り返す。1歩1歩の歩幅もかなり小さい。

気がつくといつも僕の前を歩いていたイッコが遅れ始めて、かなり後ろにいた。

しかも立ち止って動こうとしない。

イッコのところまで戻ると、イッコが号泣していた。

「頭が割れそうなくらい痛い。もう無理。やまちゃんだけで上まで行ってきて。イッコここで待ってるから。」

えっ!びっくりした。

だってイッコはここまで絶好調!たしかに眠るのが怖くて、ここ2日寝ていなかったけど、頭も痛くなってなかったし、高山病の兆候もほとんどなかったのに。

どっちかといえば、イッコよりも僕の方が高山病にやられていたのに。

ちょっと立ち止り、2人で少し休む。

「イッコ、ここまで来たらゆっくりでいいから一緒に上まで行ってみようや。どうしても無理やったらそん時降りよ。」

再び2人で歩きはじめる。さっきよりもさらに遅いカタツムリのようなスピードで。

しかし、進めば頂上は近付く。カラパタールの頂上にたなびくタルチョがはっきりと見えてきた。

はるか遠くにはエベレストBCに集まっているテント群も見えた。

そして誰もが憧れるエベレストが目の前にそびえていた。

あのてっぺんは、まだここから3000m以上も上にあるんだ。

本や映像をみることでしか想像し得なかったその世界を、今は少し感じることができた。

そして僕らの目の前には最後の難関が待ち構えていた。

カラパタール頂上直下にはゴロゴロとした黒い岩が転がっていた。最後の力を振り絞ってこの岩を乗り越えて行く。

12:30 カラパタール頂上(5545m)へ

ついに、ついに、ついに登った!

「やったー!☆〇◇@#!わー!」

おもわず叫んでいた。わけもわからないことを叫んでいた。

一時はあきらめかけたイッコとここまで登りきったのがまた嬉しかった。

2人で手を取り合って喜びを分かち合う。

カラパタールの頂上には油断すると吹き飛ばされそうなくらい、ものすごい風が吹いていた。

カラパタールの頂上は目の前にチカチカ星が点滅を始めるくらい、空気が薄かった。

カラパタールの頂上には泣きそうなくらい、ものすごく美しい風景が広がっていたていた。

そして、カラパタールの頂上は手を伸ばせば届きそうなくらい、空に近かった。

いや、ここはもう空なのだ。

心にこの景色を焼きつけたのち、頂上を後にする。

下りはあっという間だった。

苦しそうに登ってくる人たちを見て、「ナマステ!」と笑顔であいさつできるくらい楽だった(笑)

登りに3時間かかったところを、1時間もかからずに降りてしまった。

とりあえず、再び食堂で温かいミルクティを飲む。

生き返った。

しばらく休憩したのち、ゴラクシェブを後にしロブチェへ戻る。

ゆっくりゆっくり、なだらかな下り坂を歩いてゆく。

カラパタールが見えなくなり、エベレストも見えなくなり、美しい山々が少しずつ手前の山に隠れて見えなくなる。

あー、僕らはカラパタールに登った。そして僕らのカラパタールは終わった。

ロブチェに戻りながら、僕は登頂の達成感と、もうあそこへ行かなくてもいいんだという安心感に包まれていた。

16:30 ロブチェ到着。本日の行動時間11時間。僕もイッコもかなり疲れていた。

食堂のストーブやトレッカーたちの話し声がとても温かく感じられた。

トレッキング9日目につづく

夜明けまえのロブチェ。全てが凍りつき静まり返っている。
太陽が姿を現すと一気に気温があがる。
山と岩と雪の世界。岩のすき間から青白い美しい氷河が見える。時折氷河が崩れる雷のような音が谷間に鳴り響く。
峠を登り切るととうとうカラパタールが目の前に姿を現した。まるで黒い砂山?
標高差400mを一気に直登する。1歩1歩がかなり苦しい。
苦しくてもただただ頂上を目指して登るしかない。
はるか遠くにはエバレストB.C.、目の前にはエベレストの頂上が見えた!
そしてとうとうカラパタール登頂!やったー!空が宇宙の色をしていた。
カラパタールの裏側は断崖絶壁。落ちたら・・・・。
カラパタールの頂上はものすごい風が吹き荒れ、空気が薄い。とりあえず下山。下りはなんて楽なんだ。
もうエベレストもカラパタールも見えなくなった。サヨウナラ!カラパタール。日暮れまでにはにロブチェへ帰らなければ。