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瀬戸内カヤック潮流旅'10


ちょっと長いのでお暇なときにどうぞ

「瀬戸内海は川だ。」

と言ったのは誰だったろう?

瀬戸内海の潮の干満差は大きい。そして、それによって引き起こされる潮流はところによっては5~6kn(ノット:1knは約時速2km)にも達する。

その潮流をうまくつかまえれば、カヤックを漕がなくても、海の上でうたた寝しながら瀬戸内海をのんびり旅することができるだろう。

ただ、とうとうと同じ方向に流れる川と違って、潮流は約6時間毎に流れの向きが入れ替わるのだが・・・。

3月1日 旅1日目

今回の瀬戸内潮流カヤック旅の行程は12日間。

岡山の牛窓を出発し、本州側の島々を経由しながら山口の祝島を目指し、そこを折り返して、今度は四国側の島々を経由しながら、再び牛窓まで戻ってくるという、走漕距離約500kmの瀬戸内海ぐるっと1周旅だ。

かなりの距離があるため、この日も少しでも先に進もうと、お昼には出発の予定だったのだが、前日の津波警報発令で全員の集合が遅れてしまったのと、天気も悪いために、出発は明日となった。

そして今回の旅の仲間は6人。期間と距離を考えてタンデム艇(2人乗り)3艇が用意された。

雨があがり、対岸にうっすらと小豆島が見えている出発地の海岸で明日からの旅のチームを決めることになった。あみだくじが案外盛り上がる(笑)

その後は、ファミリーレストランへ移動。テーブルに海図を広げて、ピザソースを落とさないように注意しながら、明日からの旅路をみんなで考える。

今日休みとした分、行程に余裕はない。明日は追潮に乗ってぐんぐん進み、70km先の白石島を目指すことに決まった。

1日でそんな距離を漕いだことのない僕にとってはかなり不安だったが、周りを見渡せば頼もしいガイド仲間。2人で漕ぐタンデム艇だし、潮も後ろから押してくれるし、なんとかなるだろうと、残ったビールをグイッと飲み干した。

今回牛窓をスタート地点としたのは、ここにカヤックの仲間がいたからだ。

長い旅の間、浜に車を置きっぱなしにするのはあまり好ましくなく、今回は牛窓でペンションを経営しながらカヤックツアーも行っている「ペンションくろしお丸」の永田さんに車の管理をお願いすることになった。

突然の申し出と訪問を快く迎えてくれた永田さん。しかも、夜は僕たちのために歓迎会まで開いてくれて感謝感謝!

永田さんのヨットの話やパプアニューギニアの話、牛窓の話など、おもしろ話は尽きなかったのだが、明日早朝の出発のために後ろ髪を引かれながらも早めに引き上げる。

さてさて、明日の天気は、明日の海はどうだろう。ワクワクしながら、今夜は車の中で眠る。



3月2日 旅2日目 5:00起床

まだ夜が開けきらないうちにヘッドランプの明かりを頼りに出発の準備を始める。

白々と夜が開け、あたりが群青色の世界につつまれ始めると、遠くには小豆島、目の前には穏やかな海が広がっていた。旅の出発にふさわしい天気になりそうだ。

大量の荷物をなんとかカヤックに積み込み、出発前に海図を見ながらもう一度今日のコースを確認していると、お世話になったくろしお丸の永田さんが様子を見に来てくれた。

永田さんのアドバイスを参考にコースを決める。

今日のコースは備讃瀬戸の島々を抜け、瀬戸大橋をくぐり、水島灘を通り、笠岡諸島の白石島を目指すというものだ。潮に乗っていくとはいえ、かなり遠い。気持ちを引き締めていざ出発!

とはいうものの、久々の海はやっぱり気持ちがよくて、心が沸き立ち、思わず顔がにやける。おまけに追い潮に乗ってカヤックは海の上を滑るように進んでいく。幸先のよいスタートがきれた。

と、喜んでいたのは最初の1時間。あまりにも速いみんなのペースにウエアの下は汗びっしょり、さらには高級なカヤックに僕のお尻が拒否反応を示し始めた。お尻がいたい・・・。でも、漕がないと前には進まない。ペアを組んだ「くまのエクスペリエンス」上野さんのペースに合わせてひたすら漕ぐ。

ちょうどお昼に瀬戸大橋のたもとに到着した。

昨年の11月には反対方向からこの下をくぐったのだが、何度きても(2度目だが・・・)やっぱり瀬戸大橋は大きい!

「レインドッグ」の野川さんが言った。

「海沿いの工場や港などの人工物はどっちかというとあんまり美しくないんだけど、橋はいいね。」

そう、橋にはいろいろな形があり、美しいものも多い。

と、見とれていると、カヤックが前に進まなくなってきた。どうやら潮が転流したらしい。

潮は約6時間ごとに干満を繰り返す。その干満の差によって潮流が生じるのだが、瀬戸内海東部では満潮に向かうときには基本的には東から西に流れ、干潮に向かうときには西から東に流れる。

面白いのは瀬戸内海西部ではこの流れがまったく反対になってしまうのだ。そして、その分水嶺が今日のゴール地点白石島付近らしい。

ともかく、追い潮に乗ってスイスイ漕げたのはここまで。ここから白石島までは潮の流れを遡っていかねばならない。産卵場を求めてひたすら川を遡るサケのように・・・。

橋のたもとの流れの速い部分と水島航路という船の往来の激しい難所を越えたところでお昼ごはんとなった。

この日はラーメン。

家で一人で食べるインスタントラーメンにはわびしさが漂うが、旅の仲間と海を眺めながら食べると、それはごちそうに変わる。この時間があるから、少々しんどくてもがんばれる。それにしても今回の旅ではかなりの量の麺類を食べた。

楽しい時間はあっという間に終わり、再び海へ。そしてあとはひたすら漕いだ。

太陽がだんだんと低くなり、ついには島の向こうに消えてしまっても漕いだ。

辺りがどんどん薄暗くなり、気温が下がってきても漕いだ。

白石島に到着したのは真っ暗になってからだった。

夜になっても、本日のゴールを白石島にしたのはここにもカヤックの仲間がいたからだ。僕たちが島に上陸するのを、ライトで誘導してくれたのは「民宿はらだ」の原田さんだった。

僕たちのために温かいお風呂と採れたてのカキを用意して歓迎してくれた。
しかも、この夜は部屋まで提供してくれて、僕たちは畳の上で快適に眠ることができた。原田さんありがとう。

お風呂に入りあったまり、さっぱりし、カキとキムチ鍋とうまい酒。疲れた体にどれもがじんわりとしみこんでいった。それにしても焚き火で焼いたカキは最高にうまかった。旅は始まったばかりだが、僕はすでに満足していた(笑)

本日の漕行距離、こんなに漕いだの始めての69km。

砂浜に書いたあみだくじで、ペアを決める。
ファミレスでの作戦会議。大事な海図にケチャップを落とすなよ。
くろしお丸の永田さんが歓迎の宴を開いてくれる。ありがとうございました!





夜明け前に出発の準備を始める。
犬島にそびえる100年前の銅の精練所のレンガの煙突。なかなか美しい。
昼前に瀬戸大橋をくぐる。 でかい!
お昼はラーメン。 浜で食べるラーメンはなんでこんないうまいんだ!
とっぷり日も暮れたころようやくゴール。よう漕ぎました。




白石島では原田さんにお世話になりました。ありがとうございました!
青い空青い海。本日も海は穏やかです。
おやつの時間が一番幸せ!
う~ん、迷ったかな?
難所を越えて本日のキャンプ地へ。 今日もがんばりました。


今日も張り切って出発!
追い風の時にはウィンドパドルを広げると楽ちんです。
コンビニで買ったお寿司。ジャンケンで好きなの選びます。みんな真剣です(笑)
なにはともあれ本日も無事ゴール。 このあと、近くの温泉で冷え切った体を温めました。温泉最高!



どんより天気の中出発。幻想的な世界。
大型タンカーは案外早いのです。航路は無理せず横断しましょう。
午後になるにつれて晴れてきた。おまけに海はべた凪。眠い!
本日も夜になると雨。干してもウエアが乾きません。屋根があるだけよしとしよう。


本日は往路ゴールの祝島を目指します!が、朝から雨・・・。
わーお!ラダーのワイヤーが切れちゃった!海岸に緊急上陸してみんなで修理。
ヤッホー!立派なタイが釣れちゃいました。今夜は宴!
往路のゴール祝島がはっきりと見えてきた!
祝島ではダイドックの原田さんにお世話になりました。原田さん、ありがとう!
宿は子供たちが宿泊していた島の施設にいそうろう。今夜は畳の上で眠れます。



朝食後、海図を広げて子どもたちとミーティング。僕らはここを通ってきたんだぞ。
本日オフに決定。塩まみれになったウエア類を洗濯です。
この季節は祝島の名産品「ヒジキ」製造の最盛期。刈り取ったばかりのヒジキを浜でゆで、天日に干します。
まるで要塞のような祝島の棚田。こんなに大きな岩を重機もない時代にどうやって積み上げたんだろう。
子どもたちがいない静かな夕げ。できたてのヒジキをいただきました。


港の中は風裏で波も静か。が、港の外は・・・。
振り返れば祝島がくっきりと見えた。祝島の皆さんありおがとう。また来ます!
向かい風の中ひたすら漕いで風のないところでお昼ご飯。アツアツのラーメンとポカポカのp太陽の日差し。幸せだ。
午後も強い向かい風の中、ひたすら漕ぐ。漕ぐしかない。撮った写真はこれ1枚。
やったー。なんとか着いた。もう漕ぎたくありません・・・。



朝起きると昨日よりも荒れた海が広がっていた。
雨、というかみぞれが降る中、軒先でバスを待つ。寒いっ!
途中の高速道路には雪が積もっていた。一気に冬へ逆戻り。

今回の旅はこれにて終了。雨の中カヤックを車に積みこむ。
ここを旅だって祝島まで行ったんだよな。楽しい旅でした。


柴田さんと野川さん。日本を代表するカヤッカー。
頼れるあにき上野さん。
旅のムードメーカー名倉さん。
一番働き者の油小路さん。











3月3日 旅3日目 ゆっくりめの6:00起床

朝起きて出発の準備をしていると原田さんが温かいコーヒーと紅茶をいれてくれた。しかも、お昼に食べろとおにぎりと白石島の海苔をお土産にいただく。原田さん、ありがとう。今度小豆島に遊びに来てください。

荷物満載のカヤックは重い。

6人がかりでやっとだ。原田さんも手伝ってくれる。原田さん、ありがとう。今度白石島に遊びに行ったときには皿洗いでもします。

この日も天気は良い。青空が広がり、心地よい潮風が吹いている。気持ちのよい海旅が始まった。

今日のコースは広い燧灘をひたすら西進し、しまなみ海道の伯方島を目指す。そして、伯方島の南にある舟折瀬戸を通ってみようというものだった。

舟折瀬戸。

伯方島と大島の間にあるこの瀬戸は潮がとにかく速い。海図には最高9kn(時速約17km)という数字が書かれている。激流以上の暴流だ。その名が示すように、潮流があまりにも速く複雑なため、昔から海難事故が絶えない瀬戸内海の難所のひとつでもある。

それほどの難所を僕たちは越えていけるのだろうか?

そんな不安(僕以外はみんな、そんな不安はまったくないのだが・・・)やカヤックの疲れを癒してくれるのは1時間に1度訪れる休憩(おやつタイム)だ。

大量に買ったはずのお菓子はどんどん消費され、漕いで消費されるはずカロリーはどんどん補われ、一向に体重は減らない(笑)

海の上には標識はない。

僕たちは海図を頼りに、周りに見える島々の位置関係や島の形と合わせて現在位置を把握し、目的地へ進む。

そして風や潮を読み、進路を決める。回り道になっても、風を避けて島の影を通ったり、潮の反流を使うために岸近くを通ったりする。いつでも、まっすぐな最短距離が近道とは限らない。

それにしても燧灘は広い。漕いでも漕いでも遠くの島が一向に近づいてこない(気がする)。そんな中、1台のボートが波を切ってこちらに近づいてきた。

ボートのへさきにはカヤックに向かってにこやかに手を振る人物が立っていた。

それはこの辺りの海域をベースにカヤックガイドをしている、昨年のカヤック潮流旅でお世話になった「村上水軍商会」の村上さんだった。

ボートでお客さんを迎えに行く途中のほんの一瞬だったが、こんな海の上で偶然出会えたことにうれしくなった。

「気をつけて!」

村上さんに見送られて僕たちは再び進む。

広い燧灘を渡り、しまなみ海道の島々の西側を南下し、本日のメインイベント会場「舟折瀬戸」に到着したのは夕方になっていた。

流れのMAXは過ぎていたというものの目の前には川のように流れる瀬戸があった。しかも瀬戸はくいっとカーブしており、その先はあまり良く見えない。さらに、ここは航路でもあり、大きなタンカーが通り過ぎていく。

タンカーが行ってしまったタイミングで、僕らは激流に突撃した。

そこは波あり、渦あり、反流あり、ぼこぼこと水面が不思議に沸き立つところあり、なんでもありの激流だった。写真など撮る余裕はまったくなし、ジェットーコースターに乗っているように、カヤックはものすごいスピードで瀬戸を越えていった。

激流を無事越えた3艇。みんな笑顔だった。瀬戸内海は面白い。

余韻を楽しみながら本日のキャンプ地を探す。うまい具合にすぐそばにいい場所を見つけ本日はこここまで。

さてさて、明日はどんな海が待っているのだろう。

本日の漕行距離50km。















3月4日 旅4日目 のんびり7:00起床

夜半から雨が降っていた。夕べの天気予報では今日は1日本降りの雨。で、明日は休みにして、雨の中コーヒーなど飲んでゆっくり過ごそうか、なんて話していたのだが、本日朝の天気予報では今降っているこの小雨はしばらくのちにあがり、1日曇りの予報に変わっていた。

僕たちに余裕はない。休みを返上し、やっぱりこの日も漕ぎ出すことにする。

が、やっぱり少しゆるめの朝、コーヒー飲んでゆっくりしてたら、出発は10:00になってしまった。

本日のコースは伯方島を出発し、大三島の南を西進し、芸予諸島の南を通り、呉の倉橋島まで行きたいな、という希望的コース。

ただ、漕いでもなかなか調子が上がらない。気分の問題か、疲れの問題か。大三島を抜ける前にそうそうに上陸して、お昼ごはんとなった。

この日のお昼ごはんはキャンプ地の近くのコンビニで買ってきていた焼きサバ鮨やおにぎり。ただ、それぞれの種類、きっちり人数分はない。そんな時どうするか。それはジャンケンだ。

僕たちは旅の間なんどもジャンケンをした。食べられない人に情けをかけてはならない大人ルール。ちょっとしたことで大いに笑った僕ら6人。旅には笑いが必要だ。

この日は逆潮だったものの、風は追い風。レインドック野川艇は帆を上げ、風を捕まえ、らくちん航法をとっていた。いい風が吹くと、漕いでいるカヤックと同じくらいのスピードで進む。

そして、休憩のときはこのカヤックにくっついていると、休みながらも少しは前進することができた。

風よ吹け。行きは東風。帰りは西風。

目標の倉橋島ははるか遠くに見える。もうすぐ日も暮れる。仕方がないので本日は芸予諸島の上蒲刈島の南の浜に上陸となった。

今日は1日中曇りで、風も冷たく、体も冷えた。上陸してすぐに乾いた服に着替え、近くの温泉施設に向かった。

瀬戸内海の島々には上陸しやすい良い浜があり、トイレやあずま屋などの施設が充実している浜も多い。さらには浜の近くに温泉まである。カヤック旅に最適だ。

温泉からの帰り道、雨が降り始めた。あずま屋のおかげで快適に過ごすことができるが、濡れたウエアは乾かない。まぁ、冷たいのは着るときだけ、漕ぎ始めれば気にならないのだが。

夜ごはんを食べている間に雨風はますます激しさを増していった。そして、同時に僕たちの宴もますます盛り上がっていった。

本日の漕行距離、あんまり進まず38km。






















3月5日 旅5日目 6:00起床

一晩中降り続いた雨は明け方には上がり、風も収まったようで、目の前には穏やかな海が広がっていた。気温もそれほど低くなく、辺りはうっすらともやに包まれていた。

本日のコースは上蒲刈島を出発し、周防灘を西南に進み、呉の倉橋島で南に進路をとり、屋代島(周防大島)を目指すコースとした。岡山を出発し、香川、広島を通り抜け、いよいよ山口県に突入する。

漕ぎ始めて2時間もすると、晴れ間が見え始めた。風もなく、暖かいポカポカ陽気に漕ぐ手もゆるみなかなか進まない。この時間は逆潮でもあるし・・・。のんびりと瀬戸内カヤックを楽しむ。

瀬戸内海を漕ぐ際に気をつけなければいけないことは、潮流と船の往来だ。沿岸には多数の港や工場地帯があり、フェリーやタンカー、漁船などが行ったり来たりしている。

僕たちカヤックは小さいし、スピードもない。ゆっくりに見えても船は案外速い。周りに常に気を配り、こちらに向かってきそうな船があるとよく観察し、船の進路を見極め、航路の無理な横断は避けなければならない。

船が通り過ぎる間、僕たちはまとまって海に浮かんでいるのだが、疲れていた僕にとってはこれが良い休憩になった。

でも旅も4日目になると、漕ぐのにも慣れてきた。漕いでいれば、遠くに見えるあの島にもいずれはたどり着くことができる。ひと漕ぎひと漕ぎ、しっかりと水をキャッチする。

この日、屋代島の東側に大きな激流があった。

近づくに連れてゴーッという川のような音が聞こえ、あれよあれよといううちに流れの中に吸い込まれ、いろんな流れが複雑に入り組んだ激流の中を笹舟のように流され、あっという間にその流れから吐き出された。

(といっても、舵を取っていたくまペリ上野さんにとっては、なんてことのない流れだったのかもしれないが・・・。)

その後は流れに乗って屋代島の南側を西進し、あずま屋のある浜を見つけ上陸となった。

本日も快適なあずま屋生活。あずま屋は僕らのような旅にとっての重要ポイントだ。瀬戸内海あずま屋MAPの重要性を感じる(笑)

夜ご飯を食べ終わる頃、再び雨が降り出した。日中雨が降らないだけましだが、やはりウエアは乾かない。

本日の漕行距離ちょっぴり増えて53km。

























3月6日 旅6日目 6:00起床

雨は弱まったものの小雨が降り続いていた。雨の中の準備は憂鬱だ。幸いなことに風は弱い追い風が吹いている、海は穏やかだ。

今日のコースは屋代島(周防大島)を出発し、一路、往路のゴール祝島を目指す。

追い風に乗って順調に進んでいたのもつかの間、海上でハプニング発生。「アルガフォレスト」柴田&「パドリングウルフ」名倉艇のラダーワイヤー(ラダー(舵)とペダルを繋ぐワイヤー。ラダーは足を使って操作する。)が切れてしまった。

急遽、最寄りの海岸に上陸し、修理となった。

ワイヤーが切れてしまって大丈夫なのか?そこはプロのガイド集団、あっという間(でもなかったが・・・)に修理を完了させて、何事もなかったかのように再び漕ぎ出した。

肌寒く、低い雲に覆われた、防予諸島を漕ぎすすめ、岬を回りこむと、目の前にとうとう祝島が見えてきた。

案外山が高く、その頂上部は雲の中に隠されていたが、僕らが上陸する集落がはっきりと見える。あと、もう少し。漕ぐ手に思わず力が入る。

祝島の周辺は美しい海が広がっている。

祝島の手間の最後の休憩ポイントで、これまで、時間がなくて釣りを封印していたレインドック野川さんが糸をたらす。

1投目・・・・。

くるくるくる(リールを巻く音)。ビビッ、ビビッ、ガツン。(僕はカヤックの上でのおしっこに集中していて、その瞬間を見のがした・・・。ということでイメージ。)

な、な、なんと、美しいピンク色にブルーの斑点のある魚、鯛が釣れた!(みんなの声に後ろを見ると釣れていた、が正しい。)

祝島だけに、こりゃまためでたい。まるで僕たちのゴール(片道)を祝島が祝ってくれている気がした。

そして、とうとう祝島にゴール!

ゴールといっても今回の旅の半分が終わるだけで、そこからまた同じ距離を漕いで戻ると思うとまだまだ先は長いのだが・・・。

いや、なにはともかくゴールだと、みんなで喜んでいると、この辺りの海域でカヤックのガイドをしている「ダイドックオーシャンカヤックス」の原さんが僕らの上陸を島の人から聞きつけてやって来てくれた。

原さんはたまたまこの日から1泊2日で、自然学校の仕事のために子どもたちを引率して祝島に来ていたのだった。

うれしいことに、原さんが、今夜自分達が宿泊する島の施設に、もし良かったら一緒にどうぞと誘ってくれた。

ありがたい。なにしろ上陸した浜にはあずま屋はない、しかも天気予報では今夜から再び雨。僕たちは原さんの親切な提案に迷うことなく大きくうなずいた。

しかも原さんは島の人に軽トラを借りて、その施設まで僕らの荷物まで運んでくれた。原さんの親切、そして島の人の優しさに感動してしまった。原さん、ありがとう。

原さんたちとは後でゆっくりということで、なにはともかく乾いた服にさっさと着替え、島の商店が閉じる前に買いだしに行くことにした。

歩くこと数分、海から程近くにあるこの店は日用品から食品、生活に必要なものが何でも揃うかわいらしい島の店だった。

足りなくなったお菓子(重要)や野菜、缶詰、肉などを大量に買う。島のパスタを買い占めてしまってすいません。

原さんたちがこの日宿泊する島の老人憩いの家にいそうろう(?)することになった僕たち6人。

子どもたちが今日の祝島での体験の発表をしている横で僕らは夜ごはん。(もちろん子どもたちは先にご飯済ませている。)不思議な光景に思わず笑ってしまった。

子どもたちの発表も僕らの夜ごはんも終わると、なんだか知らないうちにみんな交えての将棋と五目並べ大会となってしまった。

子どもたちが優れているのか、はたまた僕たちの知能が低いのか、何度も負けてしまう五目並べ。(笑)

こうして修学旅行のような楽しい夜は更けていき、子どもたちと一緒に消灯となりました。残念ながら枕投げはなし。おとなしくおやすみなさい。

本日の漕行距離45km。往路ゴール。




















3月7日 旅7日目 子どもたちに6:30頃起こされる

子どもたちの朝は早い。朝から元気な子どもたちをよそに、僕たち大人はだらしない。子どもたちが寝袋をしまい、朝ごはんの準備を始め始めたところで、さすがに僕たちも起き始める。

海図を見ていると、子どもたちが寄ってきた。僕の家はここ、などと教えてくれる。昨夜の五目並べ大会のおかげで、子どもたちとの距離がぐっと縮まった。

朝ごはんのときのミーティングの結果、今日はゆっくり休んで疲れを癒し、明日から今日の休みを挽回するくらいばりばり漕ぐということで、本日は1日オフということに決まった。

せっかく祝島に来たのだから、ゆっくり島内を散策したいと思っていた僕にとっては願ってもない休日となった。(たしかに疲れてもいたし。)

祝島は山口県の東南に浮かぶ小さな島だが、今、日本中から注目を集めている島でもある。

それは原発問題だ。祝島のある上関(かみのせき)町に1982年中国電力による原子力発電所建設の計画が持ち上がった。以来、町は推進派と反対派に二分され、約30年過ぎた今でも原発は着工に至らず、電力会社、地域住民の対立が続いている。

そして祝島はその原発予定地のまさに対岸約4kmに位置し、島のほとんどの人は原発反対の意思を示し、反対行動を続けている。

現在の便利な生活を送っている僕たちにとって電気はもはや切り離すことのできないものではある。しかし、数万年もの管理が必要な未だコントロールが非常に難しい原子力をあつかう原発をこれ以上増やす必要があるのだろうか。しかも世界の潮流は持続可能・再生可能な自然エネルギーへとシフトしつつあるのにもかかわらず。

上関町周辺は海にも山にも貴重な自然が未だ残っている。しかも祝島の周辺は豊富な海の幸にも恵まれ、瀬戸内海に生息する小型のイルカ、スナメリの生息も確認されている。原発が建設されるために海が埋め立てられ、原発の温排水がこの海に大量に流されることで、あきらかにこの自然は壊され、この豊かな海は変わってしまうだろう。

そして今、自分達が育ってきた海や山を、子どもや子孫のために残したいと、がんばっている島人の思いが、日本全国の人たちに伝わり、広がっている。

原発の問題は長くなりそうなのでこの辺で終わる。興味のある方は「祝島島民の会」のHPを参照して欲しい。

祝島は小さな島だがとても魅力あふれる島だった。

まず目に飛び込んできたのは島のあちこちにある石積みの練り塀。石と漆喰で作られた塀はとてもかわいらしく、練塀のあるくねくねと続く路地が島らしい素敵な風景を作り出していた。

そして島の海岸線のあちこちで見られたのが干されたひじき。

ひじきは祝島の特産らしく、春先の柔らかいひじきが浜で釜茹でされたのち、天日で干されている。祝島のひじきは柔らかくておいしく、京の料亭などで使われるそうだ。(干していたおじちゃん談)

この日、「ダイドッグ」原さんは干す前の生ひじき(茹でてはいるが・・・)を使って子どもたちにひじきごはんのお弁当を作っていた。僕たちも島の人から生ひじきをいただいてこの日の夜ごはんにいただいたのだが、柔らかくて、噛むと口の中に海の香りがぷん漂い、とても美味しかった。

そして原さんに「祝島で見といたほうがよいものは?」と質問して、勧めてくれたのが棚田だった。集落から4kmもはなれた山の中にあるということで、最初は迷っていたのだが、どうせ1日時間はたっぷりあるのだからと歩いていくことにした。

片道1時間かけて歩いてたどり着いた先に待っていたものは・・・。

それはまるで城の石垣のようなどでかい棚田だった。組まれた石は大きくて、大人1人では到底持ち上げることのできないような大きなものもあった。

たくさんの田んぼが連なり優しい里山の風景を作り出している小豆島の千枚田とはまったく異なり、急峻な斜面にそびえ立つ祝島の棚田はとても雄雄しかった。はるかかなたにはうっすらと四国最西端の佐多岬が見えていた。

集落に戻ってくると原さんと子どもたちが船に乗って帰るところだった。港まで見送りに行く。

今日1日のんびり過ごすはずが、子どもたちと鬼ごっこをしたり、プロレスごっこをしたりして、全然休めなかったけど、子供たちとすっかり仲良くなった「パドリングウルフ」名倉さんの背中が寂しそうでもあり、ようやく休めるとほっとしてもいた(笑)

そして僕らはというと、原さんが島の人に話しをしてくれ、この日も屋根の下で眠ることができたのだった。原さん、どうもありがとう。

しかし、子どもたちがいない部屋はなんだか寂しのであった(笑)










3月8日 旅8日目 今日は行くぞ!と5:00起床

夜半から強い風の音が窓の外から聞こえていた。朝起きて外に出てみると、しっかりと冷たく強い風が吹いていた。しかも西風。僕たちは今日祝島を折り返し、西に向かう。つまり向かい風だ。

それでも朝日が出発の準備をする僕たちを照らし、復路の初日は明るい太陽に祝福されていた。昨日1日ウエアを干したおかげで、乾いた服を着られたことも気持ちがよかった。

祝島を旅立つ僕らに、「風がまだ強いから気をつけろよ。」と、島の漁師が声をかけてくれる。

祝島のみなさん、ありがとう!僕らも手を振りお別れする。

と、意気揚々と漁港を出たのはいいのだが、すぐに全身びしょ濡れになった。強い風が波をおこし、向かい風がその波をカヤックを漕ぐ僕たちに打ちつける。

首と手首が閉まって水が入ってきにくいウエアを着ているのだが、あまりの波に首から水が入ってきた。冷たい。でもすぐに必死に漕ぐために上昇した体温で温まる。

ただカヤックは風に押されて進まない。歩くよりも遅いようなスピードで進んでいく。

ようやく風裏までたどり着き、しばし休憩。振り向くと、往路は雲に隠れていた祝島がくっきりと姿を現していた。この美しい海がいつまでもこのままでありますように!

その後はひたすら向かい風の中を漕ぎ続けた。

風の弱い島影で休み、再び向かい風の中に飛び出し、1歩1歩(1漕1漕ぎか?)牛のように前進し、ようやくのことで島影にたどり着き、休憩し、また風の海へ漕ぎ出す。今日は修行の旅になりそうだ。

お昼ごはんは幸せだった。太陽の日差しの中、焚き火の周りで、熱々のラーメンを食べる。あー、このままいつまでもここにいたい。目の前の現実から逃避し、みんながそう思っていたようで、気がつけば2時間もこの浜で休憩していた(笑)

しかし、先に進まなくてはならない。僕たちは昨日休んだ分、バリバリ漕ぐことを約束したのだから(誰に約束したかは定かではないが・・・)。

でも、けれど、やっぱり、しかし、今日のこの向かい風の中ではバリバリ漕ぐことは無理だ。とりあえず、進路を変更して、一番近い屋代島(周防大島)を目指すことにした。

海に出ると幸せ気分は急速にしぼんでいき、昼休みに乾かしたウエアはあっという間にずぶぬれになった。

とりあえずあそこまでがんばろう。そこに着けば、次はあそこまで。

こつこつと進んでいくしかなかった。そうこうしているうちに、どんどん気分が高揚してきた。なんだか苦しさが心地よい。これがナチュラルハイというやつなのだろうか。

ただ、そのハイ状態はそれほど長くは続かず、高揚がどこかへ消え去った後は休憩の時に食べるおやつだけが僕の気分を高めてくれた(笑)

時間がたち、日が暮れ始めるにつれ、風はさらに強まり、雨も降り始め、気温はどんどん低下していった。岬を回りこむようなときには突風が吹き、海面で水しぶきが飛び、思わずパドルを飛ばされそうになった。

最後はパドルを海にズボッとさしてはグーイッと引き、ズボッとさしてはグーイッと引くというような非常にゆっくりとした漕ぎ方に変え、匍匐前進をするようにカヤックを前に運んだ。

向かい風の中漕ぐこと約8時間。ようやくあずま屋のありそうな海岸に上陸することができた。みんなの顔にはこの嵐のような海を乗りきった達成感とすがすがしい満足感が浮かんでいた。

が、僕の顔にはただ疲労感が浮かんでいたことだろう(笑)

本日の漕行距離、あれだけがんばって36km。



















3月8日 旅8日目 起きたくないけど7:00起床

昨夜は夜中から雨と風がどんどん強まり、テントが吹き飛ばされそうになるくらい荒れていた。そしてそれは一夜明けた朝も同じだった。

天気図を見るとここ数日は荒れた天気が続きそうだった。

事実、目の前にはあたり一面、白波の海が広がっている。

これからの行程とみんなのスケジュール、そして天気予報から、残念ながらこの旅はここで終わりにすることを決める。

しかし、僕たちは出発地点に戻ることを前提に旅にでたために、カヤックを運ぶ車は出発地に置きっ放しだ。

ということで、岡山の牛窓まで車を取りに行くこととなった。方法は2つ、交通機関を乗り継いで牛窓まで行く。もしくはレンタカーを借りて牛窓まで行く。時間をとるか、お金をとるかだ。もちろん、この日たっぷり時間のある僕たちは後者を選んだ。

といっても、まずは僕たちが今いる周防大島からレンタカーの店があるような都会へ行かなければならない。留守番の「パドリングウルフ」名倉さんを1人残し、ここから一番近い都会、岩国まで5人で移動することになった。

僕たちには傘などない。カッパを着て近くのバス停まで歩く。

バスが来るまであと10分。軒下で待っている僕たちの前で冷たい雨がみぞれに変わっていった。サンダルの足が冷たい・・・。

バスの暖房がうれしかった。外気に冷やされ曇ったバスの窓ガラスをこすって外を眺めると、昨日がんばって漕いできた海が見えた。今日も白波だ。いや今日のほうが荒れている。もし1日出発が遅れていたら、しばらく祝島ライフ満喫となっていたかもしれない。

バスに乗ること約1時間。今度は電車で岩国を目指す。

車窓から見る風景に白いものが見え始めた。屋根や畑に雪が積もっている。春はどこへ行ったのか?

そして岩国でレンタカーを借り、一路牛窓を目指した。

この日、広島県内の山間部では10cm以上もの雪が積もり、高速道路も一部通行止めとなっていた。

片道約5時間かけて牛窓に到着し、すぐさまとんぼ返り。往復10時間以上かけてキャンプ地に到着したときには夜の11時を過ぎていた。

そして留守番をしていた名倉さんはというと・・・。朝から始まっていたテントの中での一人宴会はとっくに終了して、すでに二日酔い状態に突入していた(笑)

本日の漕行距離0km。走行距離500km。車は便利だ。







3月10日 旅10日目 しかたがないので7:00起床

だらだらと朝ごはんを済ませ、片づけを始めるうちに雨が降ってきた。そして雨はみぞれから雪へ。三寒四温を繰り返し、春になるとはいうけれど、まさに今が寒だ。寒い。

冷たい雨の中、みんなで協力してカヤックと荷物を車に積み込み、キャンプ地を後にした。昨日走った道を再び走り始める。

せっかくなので、途中、厳島神社のある宮島の目の前にお店を構える「パドルパーク」に立ち寄る。爽やかなガイド久保田さんがコーヒーをいれてくれた。

「パドルパーク」ではカヤックで宮島ツアーという、なんだか素敵なツアーをやっている。今度遊びに来よう。ちなみにみんなで撮った写真の後ろは雪の厳島。

久保田さん、突然の、しかも2日続けての訪問に優しく対応してくれてありがとう!

あとはひたすら高速を東進し、夕方には岡山に到着した。ついでに岡山港まで送ってもらい、ここでみんなとは固い握手でお別れした。

フェリーに乗りしばらくすると遠くに小豆島が見えてきた。いつもは遠くに感じる小豆島がやけに近くに感じる。そして周りの島々だってほんのすぐそこに感じた。

カヤックは島と島を結ぶのに最適な乗り物であることを今回の旅で再確認した。そして潮と風を読めばその距離はぐんと近づく。

次回はもっとゆっくり瀬戸内の島を巡ってみよう。もっともっとこの海のことを知りたくなった。




今回の旅の仲間。

まるで半カヤック人間、スイッチが入るとものすごいスピードで漕いでいく、旅の隊長「アルガフォレスト」柴田さん。(右)




海を旅する本 kayak」編集長で釣り吉。見た目は怖いが(すいません・・・)実はお茶目な「レインドッグ」野川さん。(左)








流れのスペシャリスト、エディーパイロット「くまのエクスペリエンス」上野さん。
















旅のムードメーカー、お笑い担当「パドリングウルフ」名倉さん。(右。左はパドルのしずくを名倉さんの頭にかけて遊んでいる柴田さん)















いつも一番に起きてコーヒー入れてくれた仕事のできる「知床エクスペディション」スタッフの油小路さん。(中。左はなにか面白いことを考えている名倉さん)

みんなと旅ができてよかった。楽しい旅をありがとう。

そしてまたどこかの海で会いましょう!